代表ボランチ

   2015/10/26

【日本代表ボランチの系譜】柱谷哲二から遠藤保仁まで。変移する“ハンドル”の理想形は「遠藤+今野」の資質を持つ人材?
引用元:サッカーダイジェストWEB 2015年10月23日 配信
http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=12067

 日本代表のなかで、いまだレギュラーが定まっていないポジションのひとつが「ボランチ」だろう。10月のシリア戦、イラン戦では山口蛍、柴崎岳のふたりが長谷部誠とともに起用されたが、両者とも絶対的な地位を確立するまでには至っていない。

 ボランチに求められる役割は、時代の流れとともに変わってきたが、日本代表の中盤を彩った様々なタイプを引き合いに出しながら、現代サッカーで必要とされるボランチ像についてスポーツライターの加部究氏が論じる。

 ボランチという言葉の使用頻度が急速に高まったのは、Jリーグ開幕前後だったと記憶している。ハンドルを意味するポルトガル語だが、選手だけではなく指導者も含めてブラジルからの輸入が俄然活発化し、人気を牽引するのがV川崎(現・東京V) 、鹿島、清水などブラジル色の濃いクラブだったことも影響したに違いない。

 当初は必ず 「守備的MF」という注釈が付いたが、20世紀末にはひとり歩きするようになり、やがて外来の専門用語としては群を抜く浸透ぶりを見せた。

 しかし用語そのものの浸透ぶりとは裏腹に、理想のボランチを発掘するのは難しい状況にある。ハンドルの意味合いを中盤の底での舵取り役と解釈すれば、確かにパスを散らし攻撃の起点となれるタイプは目に付く。

 だが一方で国際基準に照らすと、ボランチには守備での鎮火作業が不可欠だ。攻撃的なスタイルを標榜するなら、洩れなく求められるのがボール奪取力で、ここで相手の攻撃を堰き止められなければ高いポゼッションも成り立たない。

 つまり、現代のボランチには「繊細さと強靭さ」 「テクニックとパワー」と相反する要素が求められるわけで、だからこそ高性能なハンドル製造への道は険しい。

(中略)

今後世界と五分に渡り合っていくなら攻守分業制では難しい。

 逆に第二次岡田武史政権の日本代表は、あまりに大胆な選択をした。遠藤保仁と長谷部誠のコンビは、守備に回る心配が少ないワールドカップアジア予選限定のプランかと見ていたが、本大会直前まで継続し守備の綻びを修正できなかった。どちらも本来は攻撃的な選手で、前任のイビチャ・オシムは遠藤を中盤のサイドで起用している。

 結局2010年の南アフリカ・ワールドカップ直前に戦術を見直した岡田監督は、ふたりの後ろにアンカーとして阿部勇樹を配して日本をグループリーグ突破へと導く。ところが後任のアルベルト・ザッケローニ監督は同じ轍を踏み、ようやくブラジル・ワールドカップ前年から改めて遠藤の起用法を模索し始めるのだが、肝心なハンドル部分が定まらずに本大会でも惨敗を喫してしまうのだ。

 日本代表のボランチ選びが難しいのは、Jリーグに明らかな国際基準とのギャップがあるからだ。バイタルエリアでの個の仕掛けが限定的で、ボランチが強烈なプレッシャーを受けるケースも少ないJリーグなら、遠藤、中村憲剛、柴崎岳らは守備に穴を開けることなく優雅なパスワークを披露できる。

 しかし激しいコンタクトが断続的に繰り返される国際舞台で戦う場合は、大半の監督が彼らを1列前や他のポジションでプレーさせようと考えるはずだ。日本を代表するボランチの長谷部や細貝萌らも、ブンデスリーガではSBに回ることもあった。

 現代のボランチには、まさにハンドルという言葉どおりの役割が期待されるようになっている。つまり攻守の展開を読み切り、できればボールを奪い取り、しかも攻撃の起点となって、時には最前線に飛び出す。ここまでこなせるスーパーマンは、さすがに世界を見渡しても限られてくるが、時代とともに当然チーム内でのボランチの重要度は増している。今では守備的MFという枠では収まり切らない多様で質の高い仕事が求められているのだ。

 昨年三冠のG大阪は、理想的なボランチのコンビを擁していた。圧倒的な読みでゲームを自在に操る遠藤と、素早い寄せとボール奪取では日本屈指の能力を持つ今野泰幸。今野を欠いても、やはり秀逸な守備力を誇る元日本代表の明神智和が控えていた。

 また日本代表の歴史を俯瞰しても、攻撃型と守備型の組み合わせが多かった。だが、今後世界に肉薄していくなら、こうした分業制では難しい。これからは日本も、遠藤と今野の資質を併せ持つ理想のボランチ育成を急ぐ必要がある。

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